「大人ニキビ」の大きな特徴として、ストレスの蓄積がその誘因となっている事は確かです。(なのでメンタルケアも大事になってきます)では、その人の生き方、考え方を変えれば万事解決するかと言えば、事はそんなに単純ではありません。ここでは、まずニキビが出来る仕組みについて見て行きましょう。
左側の皮膚の断面図を見れば解る様に、皮膚は「角層」(かくそう)、「顆粒層」(かりゅうそう)、「有棘層」(ゆうきょくそう)、「基底層」(きていそう)から成る表皮と、左側の図にあるその下の真皮、さらに下の皮下組織という三極構造になっています。
この場合表皮は「基底層」で作られるメラニン色素によって、紫外線の悪影響から皮膚を守る等の大切な役割を果たしています。左図では「ターンオーバー」についても描かれていますが、それを繰り返す事によって皮膚の表面は汗と皮脂が混じりあった皮膚膜になり、うるおいが保たれ皮膚は健康な状態を維持しています。
毛包内には多数の常在細菌がありますが、その中でニキビの発生に深く関わっているのが「アクネ菌」です。アクネ菌は嫌気性であるため毛穴が角質で塞がれて酸素が減少すると、毛包の中で皮脂を栄養にして繁殖し、急激にその数を増やします。このアクネ菌が生み出す「細菌性リパーゼ」は皮脂を
遊離脂肪酸に変化させます。この遊離脂肪酸が毛包の壁を刺激すると、表皮は角化異常を起こして厚くなり、「コメド」を作りやすくすると言われてます。また、アクネ菌が引き寄せる「好中球」が生み出す酵素や活性酸素でも毛包の壁はさらに痛めつけられ、赤く炎症を起こしたり、膿んだ状態となり最終的には破壊されてしまいます。
以上、何点か生理学的に
ニキビ発生の仕組みについて述べてきましたが、普段の生活態度において次の様な条件が重なると本当にニキビはできやすくなります。
1睡眠不足
2ストレスの蓄積
3全身疲労
4不適切な食事内容や時間帯
5肌に合わない化粧品または、高頻度に施される化粧
6汗による刺激や高温の環境
7便秘
8手や髪による皮膚への慢性的な刺激
9皮膚の不潔
面皰(コメド)
皮脂や角質が毛包に詰まって、粟粒ほどに小さく盛り上がった状態。化粧品に記されているノンコメドジェニックとは、このコメドが出来にくい処方という意味です。面皰には「白ニキビ」と呼ばれる毛穴が塞がったものと、「黒ニキビ」と呼ばれる毛包が開いて中央が黒いもの
の2種類があります。どちらもこの段階ではまだ炎症を起こしていないので、そのまま 自然に治ってしまう事もありますが、だんだん悪化してしまう場合も多いので侮れません。
丘疹(きゅうしん)
面皰にさらに皮脂が溜まって炎症を起こし、赤くなったニキビ。腫れてポツンと大きくなり活性酸素により皮脂の酸化が進むと、炎症が肌の深部や周囲に広がっていきます。膿疱(のうほう)
丘疹がさらに悪化して化膿した状態。過酸化脂質もさらに増えて炎症が進むため、赤みが強くなり腫れて熱を持つ事があります。この段階で自分で潰すのは、ニキビ痕を残す原因になるので厳禁です。膿腫
皮膚の深い部分に出来て固いしこりの様に なるニキビ。触ると痛みがあり、治るのに時間がかかります。この段階まできたら自己流ケアは絶対に厳禁。また、ここまで放置しておくのもいけません。左図の様に自律神経は脳から内臓、皮膚の血管まで全身に張りめぐらされていて、交感神経と副交感神経の相互作用によって、それぞれの働きをコントロ−ルしています。通常は無意識の内に、双方の神経が緩急のバランスを取る事によって、体を安定した状態に保っています。ところが、「イライラ」不平不満等の悪感情がつのり 交感神経ばかりが作用し続けると、体は闘争モードに入り筋肉に血液が集まってしまい、皮膚の血行は悪くなります。
脳の視床下部は、ストレスを受けると自律神経を通して、腎臓の上に位置する「副腎」に信号を送り、副腎髄質から「アドレナリン」を出します。その事によって体の免疫を増強しようとします。また、同時に脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン によって副腎皮質から「糖質コルチコイド」が分泌され、免疫を抑制しようとします。戦闘姿勢を見せて体をストレスから守ろうとするアドレナリンと「やり過ぎはいけないよ。」・・・なだめる糖質コルチコイド」がバランスを守っているのです。
自律神経が過度に緊張する時間が長く続くと、副腎皮質から分泌される「男性ホルモン」の量も増し、皮脂腺を発達させ 皮脂の分泌を高めてしまう事が推察できます。自律神経の過度の緊張は、ニキビが出来やすくなる肌の状態を作り出していく。・・・という事が考えられます。生真面目、熱心、神経が細やか、責任感が強い、他人の評価を気にする・・・等、一生懸命で頑張り屋さんの女性ほど、ストレスを溜め込みやすく、大人ニキビを発生させてしまう様です。